聖なるリンガ山を写す

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ワットプー遺跡の背後にそびえるリンガ山

 

 ラオスの古都チャンパサック。ここには世界遺産「ワットプー」遺跡として保存された、アンコール王たちの神殿が建っている。神殿はヒンドゥー教のシヴァ 神に捧げたもので、それらの遺構がそそり立つ岩峰のふもとに広がっている。この岩峰は古くから聖山として崇められてきた。1500年前に編纂された中国の 史書『隋書』には、この岩峰の名が「陵伽鉢婆」と記されている。サンスクリット語の「リンガパルバータ」を漢字にあてたものだ。「リンガ」は「陵伽」、 「パルバータ」は「鉢婆」に対応する。リンガとはシヴァ神の男根、パルバータはサンスクリット語で山を意味する。アンコールの王もこの岩峰を聖山として崇 め、格調高くサンスクリット語で「リンガパルバータ(リンガ山)」と呼んでいたのだろう。

 

   この岩峰がリンガ山と呼ばれた理由は、ヒマラヤの聖山「カイラース」によく似た姿をしているからだ。カイラースはヒンドゥー教徒にとってシヴァ神のリンガ そのものなのである。大地を突き破り天空に向かってそそり立つその圧倒的な姿こそ、創造と破壊の神シヴァが大地の女神と交合している姿なのだ。このカイ ラースとそっくりな岩峰を古代のインドシナ半島に渡来したインド人バラモン僧がチャンパサックの地で「発見」したのである。そして聖山カイラースの代名詞 となる「リンガ山」と名付けたのだ。

 

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奥日光の金精山

 奇妙なことにカイラースと驚くほどよく似た岩峰が日本の奥日光にもそびえているのを私は昨年「発見」した。「日本のカイラース」と命名したいところだが、この山は日光修験の行場としてすでに平安時代から知られていて、地図では「金精山」となっていた。この山名の「金精」は、これも不思議なことに男根を意味している。チャンパサックの岩峰同様にカイラースの姿を(絵図などで)見知っている者がそれにあやかって名付けたのだろうか。

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