空を見上げると、ココナツの木が太陽に向かって一直線に伸び、重たそうな頭を擡げている。絵の具で塗りつぶしたような青い空を背に、ブーゲンビリアが風に揺れている。うだるような暑さの午後、足元に張り付く影。どこからか聞こえてくる子供達のはしゃぐ声。ここカンボジアで暮らし始めて、もう4年が経とうとしている。
「となりのとなりで」。この言葉に込めた通り、自分の隣のそのもう一つ隣、それくらいの距離のものを感じながら過ごせたら、きっと日々は豊かなものになるのじゃないか。そんな想いで毎号、食をテーマに寄稿させていただいたこの読み物も、今回で最終回を迎えます。この4年間、世界では様々な出来事が起き大きな変化がありました。同様にここカンボジアでも、この数年で人々の生活は随分変わってきたように思えます。ただそんな大きな流れの中でもきっと彼らのコアな部分は変わらないのだと思うのです。
私たちは往々にして、新しく、速く、そして多くのものを求めるのが性のようですが、カンボジアの人々は効率と時間の囚人になりかけていた私に、今を楽しみ、あるものに満足する。家族や周りの人を大切にする。シンプルではありますが、そんな幸せの原則のようなものを教えてくれたような気がしています。いつの日にか思いを馳せるカンボジアは、冒頭のようなシーンとともに、彼らの暖かい笑顔がオーバーラップしていくだろうと思うのです。
この寄稿を楽しみにしてくださった皆様、これまでありがとうございました。またクロマーマガジン編集部の皆様、編集長の矢羽野さん、前編集長の西村さん、そしてカンボジアの全てに感謝申し上げます。
